「アルバス    お茶でも飲んでいかない?」
彼は、無粋な男ではない。たぶん。礼というものをわきまえていた。
だから。そう、だから。だから彼は、わたしの誘いを断らないだけ。たぶん。きっと、そう。

「表のスズランの花、見事に咲いておるのう」

緩慢な動きで窓の外に目をやって、アルバスが言う。は温めたカップに特製のカモミールティーを淹れながら、声だけは誇らしげにそれに答える。

「でしょう?丹精込めて育ててるんだから。花は、注げば注いだだけ、愛せば愛しただけ、ちゃんと応えてくれるから」

いけない。は顔を動かさないようにして慌てて彼の方を見たが、窓際に座った老人は春めいた外の陽気を眺め、まったく気にした様子もない。そのことがかえって癪に障り、はこっそりと唇を引き結ぶ。

「はい    どうぞ」
「お、どうもありがとう。のカモミールはいつも美味しいからのう」
「チョコレートでいい?」
「ありがとう」

紅茶と、皿に載せたチョコレートをテーブルに置くと、彼はにこりと笑ってカップに手を伸ばした。その芳香を楽しむように持ち上げてから、ゆっくりと唇へと運ぶ。

この男のそうした立ち居振る舞いが、昔から だいきらい だった。
ねえ。
あなたは一体いつになれば、心のそこから笑ってくれるのですか?
あなたは神ではないのだから、すべてをひとりで背負おうとしないでください。
(だけどあなたの、そんな笑顔も すき 。)
Titel von Juli "Wenn du lachst"