〜 目の前の景色 〜


「僕と君は違うよ」

     霧が濃くてレギュラスがかろうじて見えるというほど霧が濃かった朝
レギュラスに突然そんなことを言われた。

     「どうして?一緒よ?黒髪とか、同じ歳とか・・ともかく、一緒じゃない?」

彼はそれでも違うと言った。

そもそもレギュラスと私の間には、絶対には超えられない壁があった気がする。
今ではもう確かめられないが・・・。
     




レギュラスとの出会いは今でもよく覚えている。

本当に偶然な出会い。

は魔法薬が得意で、いわゆるスラグホーンのお気に入りだった。

「ミス 。今日私の部屋で集まりがあるんだが君もどうかね?君のお友達
も来るよ」

と、言われ、断りきれずに仕方なくスラグホーンの部屋へ向かっていた。

だがは、呼ばれた時間より遅くに着くようにするために、遠回りの廊下を通った。
そして地下から上に行く途中、ちょうどスリザリン寮から生徒が出てきた。

「へぇ、がわざわざスリザリン寮に来るとはな」

「誰が好き好んでこんな寮にわざわざ行くもんですか、偶然よ。私は用があるの
そこどけてちょうだい」

それでもどかないスリザリン生達はニヤニヤ笑っている。
なんおとも嫌な笑いだとは胸うちで毒吐いた。

「お前も一応純血だろ?穢れた血といたくないならいつでもスリザリンの仲間に入れてやるって
言うのにな」

「穢れてるのはどっちよ!?純血だなんてくっだらない!!」

「なんだと!?」

さっと杖を取り出そうとしたが、腕を掴まれ相手の方が早くに杖を出してしまった。

「サーペンソーティア!」

蛇が出現する呪文で、噛まれたらやばそうな蛇が出てきた。

「イ、インセンディオ!」

蛇た燃えていったが、最後の最後にに飛び掛ってきた。

「アツっ!!」

噛まれはしなかったが燃えていた火が腕にあたり、火傷をしてしまった。

「何をしているのですかこんなところで!!」

厳格な顔を今な怒りに染めているマクゴナガルが達のもとへ駆け寄って来た。

「騒ぎを聞いて駆けつけてみれば・・スリザリンは20点減点!!ついてきなさい、
スラグホーン先生に連絡します。ブラック、を医務室へ連れて行ってあげなさい」

たまたまか、マクゴナガルの後ろにいたレギュラス・ブラックはのことを頼まれ
少し眉を潜めたが、「行きますよ」と言って背を向けた。

「ねぇ、さっきのスリザリン生ってブラックの知り合いでしょ?何でああなる前に
止めなかったのよ」

ブラックの後ろを追いかけて、痛む腕をムシしては言った。

「僕はマクゴナガル先生を呼んだ。他はあなたの問題だったから止めない方が良いと
思ったからですよ」

マクゴナガルを呼んで来てくれた事には感謝したいが、態度がムカついた。
同い年なのに敬語を使ってくるのが更にムカついた。
にはクールに装って敬語を使っているように見えたからだ。

それがレギュラスとの出会い。

その最悪な印象がついた日から、私とレギュラスは出くわすのが多くなった。
そして、いつの間にか一緒にいることが多くなった。

冬の中庭にいる生徒はとレギュラス以外いなく、こんな寒い庭にいる私達はまったくの物好き
だ。

「ねえ、前から聞きたかったんだけどいい?」

冷たくなった手に息を吹きかけながらは尋ねた。
レギュラスは返事の代わりにコクリとうなずいた。

「グリフィンドールの私と一緒にいても何も思わないの?」

「・・・グリフィンドールは確かに嫌いだけど・・」

最後の方の言葉が聞こえなくて聞き返すと、レギュラスはゆっくり言った。

「君が・・が純血に対する態度に興味を持ったし・・グリフィンドール生でも
別かな」

そんなことを平気で言うレギュラスに内心驚きながらも思わずは顔を赤らめた。
改めて自分にもレギュラスへの特別な感情があることが分かった。






はどちらかというと泣かないね」

たわいも無い話をしている時珍しく彼から話題をふりかけた。

「そう?自分じゃよく分からないけど、そーゆうレギュラスの方が泣かないんじゃない?」

視線をレギュラスの方へ向けると、微かに口元を動かして「そうかな・・・」とつぶやいた。

その時私はレギュラスが泣いたのかと思った。
いや、涙のない泣き方をしていたのかもしれない。

そんなレギュラスを見、胸がしめつけられる感覚がして思わず手を握った。
レギュラスの手の温度は氷のように冷たかった。

「大丈夫?何か無理してる・・」

「・・・・・・僕は・・・」

レギュラスの言葉はそこで途切れ、気がつくとレギュラスの顔が目の前にあった。
彼の唇の温度は手に比べてとても安心できる温かさをもっていた。
とってもとっても幸せな時だったのに何でその時私は悲しくなったんだろうね。





そしてあの冬のわりには暖かく、空は青く澄んでいた日。

「僕は君と違う」

「君と僕の考えは違うんだ。だからもう・・・」

一瞬戸惑った様子だったが、彼は言った。

「僕にかまわないでくれ」

その瞬間妙に周りがはっきり見えた。そしてレギュラスの顔を見上げた。

「な、何でレギュラスが泣きそうなのよ・・泣きたいのはこっちなのに・・」

「ごめん」

「・・・」

しばらく沈黙が続いた。
口を開こうとした時、手に冷たいものが触れた。

は・・僕にとって・・」

やっぱりレギュラスの手は冷たくてでも相変わらず唇の体温だけは暖かかった。

そしてレギュラスの最後の言葉の続きを一生聞けることは無かった。

そしてやっぱりあの日と同じで空は青く澄んでいて・・。
今日はあなたと出会えた奇跡の日だよ?覚えてる?
最悪な印象だったね、
イラついたりもしたね、
笑ったね、
ああ、今日は妙に感傷的な気分になっちゃうな・・。




あの日とは違って
目の前に霧じゃないものが前を見えなくした。