いつだってそう。あなたは人と関わる事から逃げてる。心を閉ざしてる。私のことを特別な友達だとか言いながら、私は全然あなたの特別になった実感がない。ねえ、嫌いなら正直に嫌いだって言ってくれてもいいのよ。私は馬鹿だから、あなたに言われたら泣くかもしれないけど、しばらく立ち直れないかもしれないけど、お願いだから突き放して。もう、これ以上続けたくないの――・・・

 

「リーマス、ごめんね。私、もうあなたの友達ではいられない」

 

 ごめんね。傷ついたよね。でも、それが今の私の精一杯なの。だから、わかってね。許してくれなくてもいいから。

 

「・・・それは、僕が狼人間だから?」

 

 違うよ。あなたが狼人間だなんて、そんなことは関係ないの。ただ、つらいだけなの。あなたといると、自分が空っぽになるみたいだから。

 

「・・・そうかもしれないね」

 

 彼の顔はどんどん青ざめていく。ああ、傷つけちゃった。大好きな人のはずなのに、愛していたはずなのに――・・・

 

「もし、リーマスが狼人間じゃなかったら、リーマスは人と関わる事から臆病になってなかったかもしれない。でも・・・あなたはいつだって自分を見せてはくれなかった。すごく、すごく寂しかった。つらかった。だから、もうこんな友達ごっこは止めよう?お互い、つらいだけよ」

 

 これが私の答え。さようなら。リーマス・ルーピン。私の大好きなたった一人の男の子――・・・

 

「待ってよ!」

 

 彼に背中を見せた私は思わず立ち止まった。リーマス、今更引き止めないで。私はもう前を向くって決めたの。あなたと終止符を打つ事で、この空しい連鎖を断ち切ろうとしているの。お願いだから、お願いだから――・・・

 

「違うよ!僕は狼人間だから、と関わる事に臆病になったわけじゃない!」

 

 違わないよ。あなたは私の機嫌をずっと伺ってきた。嫌われないように、ただ嫌われないように、いつも無難な選択をしてきた。そうでしょう?狼人間である事のコンプレックスを、あなたは私の前で忘れる事ができなかった。だから、あなたは私と一緒にいちゃダメなの。あなたを苦しめるから。私が寂しいから――・・・

 

「・・・僕はが“好き”なんだ!」

 

 その言葉に私は一瞬耳を疑った。だけど、すぐに思い直した。“好き”の意味にも色々ある。尊敬、友情、趣味――それは何も恋愛に限った事じゃない。

 

はいつだって僕を一人の人間として見てくれた。友達でいてくれた。優しくしてくれた。こんなこと、生まれて初めてなんだ。僕は・・・君を失いたくないんだ!」

「・・・リーマス。私はね、あなたを友達だなんて思ったことは一度もないの。いつだって、あなたは私の恋愛対象だった。あなたが幸せになってくれたらいいって、本気で思ってた。だけど・・・あなたは肝心な事をいつも私に話してくれなかったじゃない!私の前では、いつだって顔色を窺ってた!私の前ではあなたはリーマス・ルーピンでいられないのよ!」

 

 これで最後よ。あなたに送る言葉。もう、これ以上何も言おうことはない。ありがとう。私の話を最後まで聞いてくれて。うつむいたり、目をそらしたりしてたけど、それでも嬉しかった。ありがとう。もう、私はあなたに縛られたりはしないから。私も、もうあなたを縛らないから。

 

!少しぐらいは僕の話を聞いてよッ!」

 

 いつもよりも高ぶっている彼の声に私は思わず後ろを振り返った。彼は顔を真っ赤にしてわなわなと震えていた。私はこんな彼を見たことがなかった。

 

「もし、僕の態度がはぐらかしてるとか、優柔不断とか、そんな風に見えたのなら謝るよ。でも、は大きな勘違いをしてる。僕だって、初めから君を友達だなんて思ったことはなかったし・・・ていうよりも思えない!ずっと君は僕の恋愛対象だった!僕を男として見てほしかった。それが君にはただの機嫌取りに見えたの?」

 

 いつもよりも、彼の言葉一つ一つがクリアに聞こえた。心の中にまるで水のように染み渡ってきて、切ないほどに胸が痛かった。

 

「それに、もし君が僕の幸せを思って優しくしてくれたんだったら、そんなのは大きなお節介だよ。僕は君が幸せじゃなきゃ意味がないんだ。もう幸せにしようなんて考えないでよ。もう一回、やり直そうよ・・・」

 

 リーマス、ごめんね。私は自分のことも、リーマスのことも結局は見えてなかったのね。リーマスは私と一緒だったんだ。だけど、私はあなたの幸せを考えるあまり、囚われすぎてたのよ。でも、お互い様だって言ってね。あなただって私と同じことをしたんだから、全て許してね。これからも一緒にいてね。

 

「リーマス!」

 

 彼の腕の中に飛び込み、私は泣いた。

 

「リーマス、私・・・何もわかってなかった」

「わかってなかったのは僕も同じだよ。だから、安心して」

 

 そう言うと、彼はぎゅっと抱きしめてくれた。ありがとう。気の利いた事を言ってくれて。大丈夫よ。私たち、似てるから、気を遣い合わなくても大丈夫。きっとうまくいくから。だから、できるだけ長く手を繋ごうね。できるだけよ。いつ、離れちゃうかわからないから。もしかしたら心変わりするかもしれないし、そうでなくてもどちらかいつかは先に死んじゃうんだから。だから、今を生きよう。精一杯、言いたい事を言って、泣きたいだけ泣いて、悔いのない恋人同士になろう。後なんて向かないで、二人で歩こう――・・・

 

 

このことばをつむいだら、

わたしはまえをむくわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素敵企画サイト「HARRY POTTER DREAM FESTIVAL」様に捧げます。初めは悲恋にしようかと思っていたのですが、そうなると悲しいのでやめようと思い、このあたりで落ち着きました。前回投稿したのと作風が似ててごめんなさい! by.黒乃ヨウ