そういう顔をするの、本当にやめて欲しい。
ドラコだって好きでああしているわけじゃないんだ。
けど、パンジーのやつがドラコに触れる、腕をくんでる、髪を愛おしそうに撫でてる。
嫌じゃない、嫌ではないけれどその時に限ってドラコと視線が合うのだ。
痛いほど哀しい眼差し。どうしても目を背けずにはいられない。
「ドラコ、ドラコったら!」
「何だ」
「さっきからぼーっとしてるじゃない。どうしたの」
「別に何でもない。僕に構うな」
パンジーはあらそう、と気にもしない様子でかぼちゃジュースを啜りながら、
クラップとゴイルに軽快なギャグを飛ばしてケタケタと笑っている。
私が入る余地も無く、彼らを遠くからずっと見つめていた。
ああ、今はパンジーのキーキー声が癇に障る。
ドラコと腕を組んでこちらを見たパンジーの勝ち誇った表情が忘れられない。
確かにドラコのガールフレンドはパンジー・パーキンソンだ。紛れも無い事実。
だから、どうしたっていうの?何がそんなに悲しいの!
私はは食欲が湧かず、フォークを弄びながらうなだれていた。
周りの友達は食事を終えて立ち上がった。
一口でも何か胃袋に入れようと、細かく分けたミートパイを口に運んで立ち上がったその時、
私を追いかけようとドラコがこちらに向かってくるのが分かった。
「先に寮に戻っている」
「ん?ああ、分かった」
ドラコはクラップの間抜けた豚のような返事を聞き流し、私を追いかけて全速力で大広間を駆けていった。
なるべく自然に走ったのに既に大広間を出た頃にはドラコに手首を握られていた。
「、話があるんだ」
「あら、どうやら私はいないほうがいいみたいね」
傍にいたブルストロードはにやにやと悪戯に笑みを浮かべてふらふらと寮へ戻っていった。
まだ食事を終えていない生徒が大半で、廊下には誰も居ない。
せっかく二人きりになれたのに、どうもそわそわしてしまう。
「、僕が君に言いたかったのは、」
私のゴールドブラウンの瞳から大粒の涙がこぼれるのをドラコは見逃さなかった。
「ご、ごめん。ずっと君には謝りたいと思っていて、だから」
そこで言葉に詰まった。私の手をドラコの手が包みこむ。
私は俯いたまま顔を上げようとしない。
「ドラコは私のこと、好きだっていったじゃない。ドラコは嘘つきね」
「嘘じゃない。君の事は――」
「でもパンジーと付き合ってるんでしょう?今日だって二人で仲良く毛づくろいしてたじゃない」
「あれはパンジーが僕に触れる口実かなんかだろう、たいしたことじゃない」
顔を上げた私の表情は怒りで満ちていた。
「たいしたことじゃない?よく言えるわね、ただのお友達なら四六時中あなたと一緒にいるはずないわ」
「違う。誤解だ。僕はずっとと話しがしたいと思っていて――」
ドラコ!と彼を呼ぶ声が廊下に響いた。
食事を終えたパンジーがクラップとゴイルを引き連れて戻ってきた。
最悪。間違いなくドラコは先に戻っていると告げておいたのを聞いたのに。
もうすべてが遅かった。
私は顔を手で覆って泣き顔を見られまいと、寮へと階段を駆け下りた。
「!」
ドラコはを追いかけようとしたが無駄だった。パンジーはドラコの腕にしがみついて離れない。
「がどうかしたの?それより聞いてよ、さっきゴイルがさあ」
パンジーが彼に食事中の楽しかった話なんかを言って聞かせる。
そんなの半分もドラコの耳を通っちゃいない。
スリザリンの暗い談話室まで駆け下りて私は独りで思う。
―全部忘れて。これは悪い夢だから。
あなたを愛したことなんて一度も無い。あなたのものになったことなんてありはしない。
あなたを惑わせようとする悪い、悪い、夢なのだから。
これはぜんぶゆめだから、
だから、わすれてもいいのよ
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作品提出元:H*P DREAM FESTIVAL様
ハリポタ夢の素敵企画サイト様です。
とても楽しかったです!ありがとうございました。