ビル・ウィーズリー。 私の大親友のお兄様で、前にその大親友、チャーリーから家族写真を見せてもらった時に知った家族揃っての赤毛、しかもポニーテール。 左耳にはピアスが空いていて、私より2つしか年は変わらないのにすごくかっこいいと思ったし現在進行形で思っている。 だけどこの感情は今ルームメイトたちが盛り上がっているような感情ではない。 ただ私は彼のようになりたいだけ。 「はたまには女の子らしくしてみれば?」 「ばーか。はこのままでいいんだよ、だって俺たちお揃いみたいだろ?」 一人ベッドに横たわり少し前まで談話室でしていた3人での会話を思い出す。 私とチャーリーはまるで姉弟のように(チャーリーは兄妹と言いはるけど私はやっぱり姉弟だと思う)仲がいいとグリフィンドールは勿論他寮でも知られている、らしい。 お互いあまり男だとか女だとか気にしていないから多分変にませてないんだと自分たちでもわかっている。 ただビルは、私からしてもチャーリーのお兄様なんだけど彼はかなり私を妹のように扱う、憧れを抱いているぶん子供扱いは少し悔しいがチャーリー曰わく「ビルが女の子に自然な笑顔を見せる事はめったにない事だよ」と言っていたので許してあげようと思う。 確かにビルを見ていると、大体は話しかけられる形になっているがそれでも会話中に見られる笑顔はいつも見るようなやんわりとしたものではなく作り物のようで、なんだか優越感を感じる。 ゴロリと寝転がって右の耳からルームメイトたちの話を聞く、時々『ビル』という単語が聞こえてきているのは私の気のせいではないと思う。 「ねぇはビルが彼女いるか知ってる?」と女の子らしい声で聞いてきたルームメイトの一人を体を動かしもせず見つめた。 どこか彼女たちがよそよそしいのは私が知り合い程度でしかないうえにきっと今私は話しかけられるのを嫌だと思っている事がわかるからだろう、それでも私に聞いてくるルームメイトに苛立ちを覚えた。 「知らない。自分たちで聞けば?」 ベッドから起き上がりそう言ってから私は勢い良く扉を開けてまた勢い良く閉めて出ていった、無性に彼女たちの口からビルの名前を聞きたくなかった。 部屋を出た勢いのまま私はチャーリーが私の名前を呼んでいた気がしたが気づかなかったフリをしと談話室も飛び出した。 特に行き先など決めてはいなかったけれどひたすら大股で歩き続ける。 私自身、自分がこんなに苛立っているのがわからなかった。 ふと、聞き覚えのある声が聞こえきて大股で歩いていたのを止め教室の前で立ち止まる。 空き教室にいたのはビルとふわふわとしたような女の子で、私は目を見開いた後まるで喉の奥を握りつぶされたかのような感覚になり、思わずその場で立ち尽くした。 さっきまでルームメイトたちが話していたようなものが今目の前で行われていて、 ドクドクと激しくなる心臓はなんだか冷たくなっていくような気がして、 ビルの表情は後ろを向かれていて見えなかったけれど女の子の方は真っ赤に頬を赤らませていて、 見たくなかったと談話室でチャーリーと一緒にいればよかったと後悔した。 「!?どうかしたのか?何で泣いてるんだよ?」 耳のすぐ後ろに、今一番聞きたくて今一番聞きたくない声がしたけれど私は振り返りも返事もしなかった。 ただ知らない間に頬を濡らしている事が格好悪くてゴシゴシと着ているローブの裾でこすりとる。 自分でもなんで泣いてるのかわからないのに、ビルはそんな私を慰めるように頭を優しく撫でてくれる、余計に鼻の奥がつんとした。 ますます止まることを知らずに溢れ出てくる理由のわからない涙に、どうすればいいのかわからなくて、泣いている格好悪いところなんてビルに見せたくなくて、ぼやける視界で俯いたまま床を見つめた。 ぽつりぽつりと床に染みが出来て、なんでビルがここにいるのだろうかと思った。 相変わらず俯いたままの私にどうしたのかと優しく聞いてきているビルに、私は「な、ん…で?」としゃっくり混じりに尋ねる。 何が?と私の頭を撫でる手の動きを緩めて返してきたビルに、私はゆるゆると視線をあげてビルを見た。 ビルの私を見下ろす表情を見てまた眼球の奥が熱くなって視界がぼやけた。 「な…んで…ビルが…ここに、いるの?」 「その前に、何でが泣いているのか教えてくれりゃ答える」 「わ、かんないけど…ビルが、他の子といるの…見たく、なくて…」 勝手に口から言葉を発していてますますワケがわからなくなったのに、ビルは「…そういう事、か」と冷静に呟いていて少しだけ悔しい。 鼻を啜れば静まった廊下に音が響く、チラリとぼやけた視界で先ほどまでビルもいた教室の中を覗けば誰もいなくてあの可愛らしい女の子はどこに行ったんだろうと思った。 あの子はきっとビルに、告白でもしたのだろう。 そう思うとまた泣きたくなって、情けない気持ちになった。 「俺だってが誰かといるの見たくないさ。チャーリーにだって俺は妬いてるんだぜ?」 ぐしゃぐしゃと、私の髪をかき乱すように撫でるビルの言葉に再び視界を彼に戻す。 ビルは照れたように笑いながら「どういう意味かわかるか?」と聞いてきたのでふるふると頭を横に振った。 「俺はずっとが好きでしか見てなかった。が必要でのそばには一番近くにいたいと思う俺が今まで感じていたような気持ち、一緒だろ?つまりは俺の事…?」 髪を撫で続ける手と反対の手でマグルの道具のマイクのような形を作り私につきだしてくるビルに、頬は濡れているのに何故か乾いていた唇を動かした。 好き…? 声は出なかったけれどビルはちゃんと理解してくれたみたいで「よくできました」と言って私の額にちぅ、と言う音と共に唇をつける。 そこからまるで熱が発しているかのように熱くなっていった。 「あの子は同じ監督生の子でコレ、チャーリーへのラブレターを渡してくれって頼まれたワケ。けどまぁ―――」 が俺の事好きだって自覚してもらえて嬉しいよ、とポニーテールを揺らして笑ったビルに、 私もつられるようにして未だに泣き止めていなかったけれど笑った。 |
笑顔で泣いたあの日
H*P DREAM FESTIVALさま提出作品
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